ホーム人材育成の糧訓示等の実例集

訓示等の実例集

「統率力の修得・向上の必要性について」:福江広明 令和6年5月20日

**************************************

現下の情勢にあって、現役の自衛官には、統率(指揮・統御)力の修得・向上に精励されんことを切望します。その演練の一つとして、部下部隊と対面する機会を日々作為し、国内外情勢から防衛政策、防衛力整備、隊務方針、指導要領、訓練に臨む姿勢、家族愛等、あらゆるテーマを対象に自らの言葉で部下部隊に自らの思いや考えを発信する努力を続けてもらいたいと思います。

**************************************


 一般社会において時短をはじめとする働き方改革が定着してきた昨今、これに連動する形でデジタル技術の導入・移行が一気に加速することで顕在化しつつある「デジタル偏重」の危険性に警鐘を鳴らす記事が散見されるようになりました。

 デジタル機器を通じて得た膨大な量の情報・知識を十分に選別・分析することなく、自らの都合にだけ適合する考え・内容を周囲に示すことを、「迅速」「効率」「利便」と言い放って憚らない人も少なくないようです。

 また、デジタル機器の安直な使用が各種問題を引き起こし、その弊害は他人のメンタルヘルスや各種ハラスメントにも波及するという社会現象にもなっています。

 

 社会の縮図と言われる自衛隊組織にあっても、科学技術の発展や省人化等の背景から、隊務運営上の業務効率化並びに各種防衛力整備事業のデジタル化が促進されて久しく、とりわけ安保3文書が策定され抜本的防衛力強化に伴う防衛費の増加によりデジタル化はいっそう進んでいるはずです。

 隊員の募集が難航する中での業務量が増大していることと、隊員間の意思疎通がデジタル機器に依存する度合いが高まることを考えると、指揮官にとって統率(指揮と統御)力を練磨する機会が減少し、隊員相互の信頼感醸成が十分できず、平素の隊員指導、ひいては実員指揮において重要となる部下の掌握、企図の明示、適時適切な命令等を実行するにあたって、自信を得ないまま不安すら抱えることになってしまうのではないでしょうか。

 

 優れた統率力はいかなる時代であっても、国家の存続には不可欠であり、その修得・向上は不変でなければならないはずです。これから数十年も経てば、AI、量子コンピュータ、ロボティクス等が飛躍的に進化しヒューマノイドを主体とした戦いが常態化することになっていくのでしょう。考えようによっては近未来戦争においても戦いの成否を決するのは統率の出来次第になるのかもしれません。

 
 米空軍はすでに組織の「再最適化」事業を進める中で、人材育成の分野の一項目に、「大国間競争の環境下で適切に兵士を指揮統御(統率)できる将校育成を目的とした、米空軍士官学校、将校教育学校、予備役コースにおけるリーダーシップの育成・訓練見直しを継続している」とのことです。

 私自身、初級幹部の時代には、幹部候補生学校や幹部普通課程入校によって机上で学んだ指揮・統御の概念を、日々勤務する中で、上司、階級上位者、年配の上級空曹、同世代の空曹士との間で、命令と服従、感化教導等を意識して時には理屈で、またある時には感情的になりながら、実践を通じて心理工作を含めた統率技能を少しずつ身に付けていったように思います。

 自衛隊も、きっと米軍と同様に、それ以上に人材育成のための各種施策をこれから打ち出していくことでしょう。しかし、組織主導の育成策だけに依存してはなりません。ぜひ個人として統率(指揮統御)の修得・能力向上を目指していくべきです。その過程で参考となる方法・手段は数多く存在しています。


 今後、私が部隊指揮官となった際に積極的に実践した、訓示、就任の辞、各種挨拶を掲載していきます。指揮官としての意志、当該部隊のビジョン、部隊部隊の慰労・激励等、様々な目的をもって実施してきたものです。部下部隊等に対して自己の考えを積極的に発信していくことは、統率の初歩ではありますが、安易な気持ちで臨むべきではない重要な一歩でもあります。

 指揮官には、精強な部隊を育成することを強く求められています。その責務を果たすためには、自らの統率(指揮・統御)力のあくなき向上が不可欠であり、この自己研鑽があってこそ、部隊の精強化が図られていくのだと確信しています。

就任の辞:鈴木航空幕僚長(平成2年7月9日)

**************************************

現役時代における自身(福江広明)による部下部隊に対する着任の辞、訓示、各種挨拶などを探していたところ、上司の意図を知ることと、自分自身の指揮官としての発信力を高める参考にすることの目的で、保管していた資料(写し)を数点、発見しました。そこで、まずは大先輩の精錬された挨拶文を掲載することから始めます。

**************************************

 本日、航空幕僚長の職を継承した。

 激動する内外の情勢に鑑み、我々は、なお一層毅然たる態度を堅持して黙々と職務に邁進しよう。
 この重要な時期に当たり、隊務運営の指針を別に示したが、私の意のあるところを体して、一致団結、総力を結集して精強さを追求し、国民の信頼に応えよう。

 私は、諸官の陣頭に立ち任務至上、全力を尽くす決意である。


平成2年7月9日
航空幕僚長 空将 鈴 木 昭 雄



「隊務運営の指針」

 

1 全般

(1)航空自衝隊は、空における精強な存在により、国の安全保障に貢献し、もって我が国の進歩と発展に寄与する。

(2)我々は、空の守りを通じて、この国家社会の生存と繁栄に直接奉仕できることに、強い誇りと自信を持とう。


2 隊務運営の要件

(1)防衛は、国民の信頼が原点である。信頼は、求めるものでなく得るものである。我々は、国民のために存在することを常に念頭に置き、国民に開かれ,国民のために汗し、国民とともに歩む心と姿勢を保持することが大切である。

(2)隊員は、航空自衛隊の貴重な宝である。人材の確保に努め、一人一人の個性を尊重し伸展させてこそ自主自律、自由闊達な雰囲気が生まれ、組織活力の源となる。また高い士気は、我々の組織の命脈であり、人間性に対する深い理解が、その基盤にある。

(3)航空防衛力は、量をもって質を補えない特性がある。空における精強は、技術、練度、運用において常に世界第一級を飽くことなく追求する姿勢から生まれる。この精強の維持こそが有事、有効な対処力となり、平時においても真に有効な抑止力として機能することになる。

(4)アメリカ合衆国との信頼関係は、我が国の安全保障の基盤である。我々は、米軍特に米空軍との信頼の絆を強くするため、あらゆる場において不断の努力を払わなければならない。精強な組織の存在とともに、隊員一人一人の武人として自己を練磨する真摯な姿勢こそが信頼を得る道である。

 

3 隊員の行動規範

(1)航空自衛隊は、大空を行動の場とする機能集約型の組織である。この組織において信頼される隊員となるためには、隊員は、まず一人一人がそれぞれの職域においてプロフェッショナルになることを要求される。

(2)我々は、これまでの挑戦の歴史を通じて、エアマンシップの練磨を伝統の心としてきた。エアマンシップとは、「迅速機敏」、「積極進取」、「柔軟多様」、そして「協調」を基調とする思考と判断と行動であり、これを継承し続けよう。

(3)大空に生きる者として我々は、「明るい心」、「さわやかな心」、「謙虚な心」を大切に育てよう。

離任の辞:杉山航空幕僚長(平成8年3月25日)

**************************************

現役時代における自身(福江広明)による部下部隊に対する着任の辞、訓示、各種挨拶などを探していたところ、上司の意図を知ることと、自分自身の指揮官としての発信力を高める参考にすることの目的で、保管していた資料(写し)を数点、発見しました。大先輩の精錬された挨拶文を掲載することから始めます。

**************************************


離任の辞

 私は3月25日付をもって、統合幕僚会議議長を命ぜられ、航空幕僚長の職を辞することとなった。
 一昨年7月、航空幕僚長拝命以来、隊員諸官にあっては、各級指揮官を中核に一致団結、昼夜の別なく献身的な努力を払い、各種の困難を克服し、よく私の期待にこたえてくれた。ここに深甚なる感謝の意を表するものである。
 特に在任間は、空自創設40周年の節目に当たり、諸官とともに、新しい一歩を踏み出した時期であった。また、同時に、20年ぶりの「新防衛計画の大綱」策定の時期に当たり、 「これからの航空自衛隊」について、ともに議論し、その方向付けができたことは、貴重な経験であった。
 新大綱においては、最近の報道等においても顕著なように、一段と厳しさを増しつつある、周辺軍事情勢への対応に加えて、災害派遣、安全保障環境の構築等、任務の多様化、国際化が期待されるところとなった。既に着手されている数々のプロジェクトに加え、 これらの任務を的確に遂行するために、一層の努力と創意が必要とされるところである。
 幸いにして、私の後任には、新進気鋭、人格見識に卓越した新航空幕僚長村木空将を迎えることとなったので、新航空幕僚長を中心に、ますます一致団結し、新しい時代の新しい組織を目指してまい進されるよう、期待するものである。諸官の更なる健闘を祈る。
 終わりに、本職在任間、各種行動中に殉職された御霊の御冥福と御遺族の御多幸をお祈りするとともに、隊員諸官と御家族の御健康と御発展を祈る。

平成8年3月25日
航空幕僚長 空将 杉山 蕃

着任の辞:杉山統合幕僚会議議長(平成8年3月25日)

**************************************

現役時代における自身(福江広明)による部下部隊に対する着任の辞、訓示、各種挨拶などを探していたところ、上司の意図を知ることと、自分自身の指揮官としての発信力を高める参考にすることの目的で、保管していた資料(写し)を数点、発見しました。大先輩の精錬された挨拶文を掲載することから始めます。

**************************************


   統合幕僚会議議長着任の辞


 私 杉山蕃は、本日付をもち統合幕僚会議議長を拝命致しました。


 激しく揺れ動く国内外情勢の中、自衛隊が新しい一歩を踏みだそうとするこの時期、統合幕僚会議議長拝命を光栄に思いますとともに、その職務の重さに身の引き締まる思いを致して居ります。

 申し上げるまでもなく、今日の国際情勢は、旧ソ連邦の崩壊に伴う冷戦構造終罵後の「対話と協調」に基づく新しい国際秩序構築のための努力と、民族・宗教・領土などをめぐる対立、抗争という相反する二つの流れが大きなうねりとなり、揺れ動き、不確実・不透明な状況であります。
 一方、国内においても、阪神淡路大震災、地下鉄サリン等社会的に極めて大きな混乱をもたらした事件等の余燈いまだ冷めやらぬところであり、他方においては長期にわたる経済不振の脱却に向け、懸命の努力が継続されている等、諸般の問題を抱える中、日米安保の再評価、周辺軍事情勢への対応等防衛への関心も一段と高まりつつある情勢にあります。

 このような国内外情勢の中にあって、我々自衛隊は次の課題に直面していると思います。
 第1は、与えられたいかなる任務にも即応できる質の高い組織集団として、「精強さ」を維持、向上するとともに、その力を有効に発揮できる態勢を堅持することであり、

 第2は、昨年末策定された「新防衛計画大綱」及び「中期防衛力整備計画」に基づ
き、より効率的な組織を目指すとともに、必要な機能の充実と質的向上を図ることであり、

 第3は、これと並んで、今後、より重要性を増す日米安全保障体制のさらなる充実・強化に努力するとともに、より安定した国際社会の実現に資する事などであります。

 本来、自衛隊は、国家諸機能のうち最も「堅実」かつ「重厚」であるべきものと認識していますが、不確実・不透明な時期にあっては、なおさら周囲の変化に、右顧左眄することなく我が国の平和と独立を守るという崇高な任務に誇りと自信を持ち、整々として、三自衛隊の「力」を結集し、任務を完遂し国民の期待に応えなければならないと考えます。

 三自衛隊の「力」の結集という観点から申し述べますと、各自衛隊相互の信頼感など基盤となるものについては諸先輩のたゆみない努力により既に整っていると思いますが、統合機能の拡充強化、統合運用能力の向上等についてさらに充実、発展の努力が必要であり、このために、統合幕僚会議が果たさねばならない役割は重かつ大であると考えます。
 歴代統合幕僚会議議長の培われた伝統を基礎とし、諸官とともにこれら諸問題に取組み、自衛隊の発展と統合の充実に努力したいと考えております。

 諸官の、ご支援、ご協力をお願いして、着任の挨拶といたします。

                  平成8年3月25日
                   統合幕僚会議議長
                    空 将  杉 山  蕃

就任の辞:村木航空幕僚長(平成8年3月25日)

**************************************

現役時代における自身(福江広明)による部下部隊に対する着任の辞、訓示、各種挨拶などを探していたところ、上司の意図を知ることと、自分自身の指揮官としての発信力を高める参考にすることの目的で、保管していた資料(写し)を数点、発見しました。大先輩の精錬された挨拶文を掲載することから始めます。

**************************************


          就 任 の 辞

 本日、航空幕僚長の職を継承した。全力を傾注して、この重責を全うする覚悟である。
 航空自衛隊は、創設以来40年余りの歴史を積み上げ、尊い犠牲を払いつつも、確固たる信念とたゆまぬ努力によって幾多の困難を乗り越え、着実に態勢を整えてきた。我々は、この歴史を誇りとし、よき伝統を受け継ぎ、引き続き理想を追求し、我が国防衛の先兵として、ますますの発展、充実を期さなければならない。
 しかしながら、時まさに歴史的転換期を迎え、航空自衛隊は激動の波間にある。すなわち、国際情勢は冷戦構造に代わる新たな安全保障環境を構築できず、依然として不透明、不確実である。我が国においても、防衛力は、国家安全保障の重要な役割として積極的かつ明確に位置付けられたものの、そのコンパクト化と近代化が求められている。
 航空自衛隊は、こういう時こそ揺るぎなき態勢を堅持し、さっそうとして期待にこたえうる組織であることが重要である。組織の真価は逆境によって顕現され、組織の将来は今日の課題にいかに対処するかによって決定される。その意味から、現在は航空自衛隊の真価が問われる時期であることに思いをいたし、今日の努めと明日の備えのために全員でがっちりとスクラムを組み、すがすがしい汗を流そうではないか。
 ここに就任に当たり、我が隊務遂行において、保持すべき姿勢、思考、行動の骨幹とすべき、 「隊務運営の指針」を明示し、来るべき21世紀に向かって我が航空自衛隊の更なる精強化への起点としたい。
1 作戦体質の維持
2 質的優位の確保
3 有機的な組織活動の実施
4 統合マインドの追求
5 米国との信頼の醸成
6 社会との協調
 本職、空を守る果てしない情熱の下、諸君とともにあり先頭に立つ。
 諸君の健闘を祈る。

平成8年3月25日
航空幕僚長 空将 村木 鴻二

離任の辞:吉田航空幕僚長(平成19年3月28日)

**************************************

現役時代における自身(福江広明)による部下部隊に対する着任の辞、訓示、各種挨拶などを探していたところ、上司の意図を知ることと、自分自身の指揮官としての発信力を高める参考にすることの目的で、保管していた資料(写し)を数点、発見しました。大先輩の精錬された挨拶文を掲載することから始めます。

**************************************

             
             航空幕僚長離任の辞 
 
 本職、S月28日付をもって航空幕僚長の職を辞することとなった平成17年1月12日に就任以来、隊員諸官は、各級指揮官を核心として、一致団結し、常に前向き、かつ、ひたむきに任務を遂行し、航空自衛隊が全体として健全な状態であることに、あらためて深甚の意を表する。 

 思い起こせば、在任間の情勢の変化は激しいものであり、米軍再編をめぐっては、日米間の協議が取りまとめられ、総隊司令部の横田移転やミサイル防衛に関する情報共有、日米共同訓練の一層の充実などの方向性が示された。また、統合運用が開始され、多様化する役割などに速やかに対応し、任務を迅速かつ効果的に遂行する態勢が整えられ、運用を中心とした新たな時代へと踏み出した。また、我が国周辺においては、北朝鮮による核・ミサイル開発問題等、安全保障にかかわる厳しい状況が継続している。 
 ー方、防衛庁の省移行が決定されるなど、我々に対する国民の理解・期待はー層の高まりを見せている。 

 航空自衛隊は、対領空侵犯措置及び災害派遣はもとより、イラク特措法に基づく復興支援活動、国際緊急援助活動、国際平和協力業務、対米支援のための航空輸送活動等、多様化する任務を的確に遂行し「働いて、結果を出せる組織」として、その実力を国内外に示すことができた。このことは、航空自衛隊4万7千人の隊員の責任感と強い信頼関係の証と確信する。 
 今後、航空自衛隊は、緒に就いたばかりの統合運用下において、ー層多様化してゆくであろう役割と、益々高まりを見せる国民の期待に対し、平時から有事までの各種事態において、迅速かつ効果的に任務を遂行し得る態勢の整備に具体的に取り組んでいかなくてはならない。 
  今後は、田母神航空幕僚長を核心とし、航空自衛隊が良き伝統を継承しつつ、将来においても活き活きとして精強な存在であり続けることを祈念する。 

 終わりに、航空自衛隊の発展の礎となられた殉職隊員の御冥福と、御遺族の御多幸をお祈りずるとともに、航空自衛隊の益々の発展及び隊員諸官の益々の活躍と健康を祈念し、離任の辞とする。 

               平成19年3月28日 
                                   航空幕僚長  空将 吉田 正 
           

就任の辞:田母神航空幕僚長(平成19年3月28日)

**************************************

現役時代における自身(福江広明)による部下部隊に対する着任の辞、訓示、各種挨拶などを探していたところ、上司の意図を知ることと、自分自身の指揮官としての発信力を高める参考にすることの目的で、保管していた資料(写し)を数点、発見しました。大先輩の精錬された挨拶文を掲載することから始めます。

**************************************            
        
             航空幕僚長就任の辞 

 私は、本日、航空幕僚長を拝命した田母神空将である。 
   私自身、この重責を痛感し、誠心誠意、全力を傾注し、その任を全うする覚悟である。 

   さて、諸官も十分認識しているとおり、現下の国際情勢は、米国における同時多発テロの発生を契機として大きく変化し、大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散を含め、「新しい種類の戦争」ともいうべき国際テロリズムの脅威と対時することとなった。 
   一方、我が国周辺においては、北朝鮮の核開発及びミサイルの開発・配備、技致問題の未解決といった国民の安全に直結する問題が存在するほか、東シナ海における中国による資源開発、ロシアによる北方領土や韓国による竹島の不法占拠が継続しているなど、従来型の安全保障上の課題が存在している。また、周辺国においては、国防予算の増額や、海・空軍力を中心とした軍事カの拡充・近代化が継続されるなど、我が国の安全保障をめぐる問題は、予断を許さない情勢が継続している。 

   このような中、航空自衛隊は、有事に有効に機能することはもちろん、周辺事態における後方地域捜索・救助活動、大規模災害対処、ゲリラ・テロ対処、新たに本来任務とされた国際平和協力業務の実施等、多様化する任務に迅速かつ的確に対応し得るよう強く求められているところである。防衛庁の省移行を通じて国民の期待がー層の高まりを見せているところ、航空自衛隊はその期待に応えるべく、イラク特措法に基づくイラク復興支援業務、テロ特措法に基づく対米支援業務、対領空侵犯措置任務、災害派遣任務等を積極的に実施していることは周知のとおりである。 

   さて、航空自衛隊は創立以来、半世紀を超える歴史を刻んできた。諸先輩方は、文字どおり血と汗と涙をもって、組織を整え、制度を定め、部隊を鍛え、装備を充実させ、人を育成し、任務遂行の実績を積み上げ、多大な成果を残された。我々は、これら諸先輩方の功績に対し深甚なる敬意を表し、その歴史を踏まえ、良き伝統を継承し、航空自衛隊に課せられた崇高な使命を完遂すべく、一層精進することが肝要である。 
  私は、周辺国の軍事情勢、米軍再編、BMD運用態勢の整備、統合運用、空自骨幹組織等の改編等を見据え、変革の時代においても航空自衛隊が真に機能を発揮し得るよう、平時から有事までの各種事態において有効に対応し得る態勢の整備、部隊の健全・活性化のための諸施策の推進に全霊をもつて努力する所存である。 
   その際、戦力の造成に10年単位での長期間を要する航空防衛カの特質を考慮し、10年後、20年後の役割を見越し、運用に立脚した航空自衛隊を創り上げてゆきたい。そのため、将来ビジョンを持った各種計画の立案、防衛力の整備、運用環境の整備に努めてゆくことが必要と考えている。また、運用に関するニーズは、部隊から発せられるものでなくてはならず、各級司令部は、その具現化に努カをしてもらいたい。 

   航空自衛隊が精強かつ健全であり、国民から真に信頼される組織であり続けるために、全隊員は、信念と誇りをもって各々の責任を果たし、各級指揮官を核心としてー致団結、思いやりの心と組織に対する強い帰属意識をもって任務遂行にまい進することを強く望むものである。また、各入においては、独創性を持って、それぞれの立場でのびのびと、元気を持って勤務をしてもらいたい。 
  「我は、常に諸官の先頭にあり。」 

                  平成19年3月28日 
                                        航空幕僚長 
                                          空将   田母神 俊雄 

航空支援集団司令官 就任の辞:平成26年8月5日㈫

 **************************************

現下の情勢にあって、現役の自衛官には、統率(指揮・統御)力の修得・向上に精励されんことを切望します。その演練の一つとして、部下部隊と対面する機会を日々作為し、国内外情勢から防衛政策、防衛力整備、隊務方針、指導要領、訓練に臨む姿勢、家族愛等、あらゆるテーマを対象に自らの言葉で部下部隊に自らの思いや考えを発信する努力を続けてもらいたいと思います。以下は私自身の拙文ですが、各級指揮官の皆さんの参考になればとの思いで掲載します。

**************************************
以下は、就任当日に隷下部隊全体に対して、就任の言葉を簡明に記したものです。

          航空支援集団司令官 就任の辞

 本日、航空支援集団司令官を拝命し、同職を継承した福江空将である。 
 現下の予断を許さない国内外情勢にかんがみ、順境にあっては矯ることなく隷下部隊等が保有する機能のさらなる向上を目指し、また逆境にあっては一刻も早く組織力の改善・回復を図り、集団としての総力を確保するよう、所属隊員は「改善と自律」を信条にそれぞれの職務に精励しよう。 
   このため、私自身、「精強と慈愛」、すなわち力強さと巧みな技の会得、そして人・物をいとおしむ心の育成を念頭に、いかなる環境の変化にも、いかなる事態の発生にも適応できる理想の隊務運営を常に追求し、このことに身命を賭す決意である。 
                          平成26年8月5日 空将 福江広明 

以下は、司令部勤務隊員等を意識して勤務方針等の細部を示す内容にした就任の言葉としています。使い分けをしてみました。

        航空支援集団司令官 就任の辞(司令部等にて) 
 本日、航空支援集団司令官を拝命し同職を継承した。隊務運営のあるべき姿を常に追求しつつ、この重責を全うするため身命を賭す決意である。 
 航空支援集団にとって、今年は創設からちょうど25周年目の節目の年。この間、当集団は国内外において多種多様な任務を遂行してきた。時には尊い犠牲を払いながらも、たゆまぬ努力によって幾多の困難を乗り越え、輝かしい実績を着実tこ積み上げてきたところである。 
 
 航空支援集団は、予断を許さない現下情勢においてはもとより将来にわたり保有する各種機能を遺憾なく発揮する揺るぎない態勢を堅持し、国民の期j寺に応え得る組織であり続けることが肝要である。このため、私は当集団の隷下部隊等を取り巻く環境を現場進出等を通じて、すみやかに把握するとともに、当集団としての隊務運営上の中長期的なビジョンを示し、これを具現化していくことを自らに課すこととしたい。   
 諸官、航空支援集団としては、組織に対して付与された任務を完遂するとともに、所属する個々の隊員がより良き人生を全うせんがため、明るく、厳しく、そして爽やかな集団の気風を維持しつつ、「任務完遂 事故皆無」をモットーに、いとおしむ心を持つ碧き大空のつわものであろうではないか。 
 
 就任に当たり、次なる四半世紀に向けた新たな歩みを着実に進めていく上で、全隷下部隊等に対する統率方針である3つの項目を明示する。なお、今日ある集団の良き気風と伝統を継承するという観点で、前任の司令官の所信に本職の新たな方針を加えたものである。 

1.変化への適応

2.矜恃の保持
3.改善と自律の追求

 終わりに、本職、諸官の陣頭に立って任務至上、与えられた職務に尽力する所存であるを告げ、着任の辞とする。 
                                                   平成26年8月5日 
                                         航空支援集団司令官 空将 福江広明

指揮官VTC:平成26年8月7日

 **************************************

 航空幕僚長が主催する指揮官(編合部隊指揮官等)VTC(ビデオ会議)が、緊急時以外でも開催されるようになってきた時代です。
 この時は、その年8月に編合部隊指揮官を含む人事異動があったことで、特に安全・服務規律の観点からVTCが行われました。次第としては、開会のことば→安全・服務規律違反等の状況(飛行安全・服務事故、飲酒運転、自殺事故等)→各部隊長意見→空幕長訓示→閉会のことば でした。
 空幕長は20分ほど時間をかけて自らの所信、夏休暇前の各級指揮官の着意、最後に指導方針である「迅速機敏・変幻自在」の意義を発言されました。以下は、この空幕長の訓示前に、参加した指揮官の一人として、当時支援集団司令官であった私が意見を述べた内容です。指揮官会合の一コマです(ママ記載しました)。参考までに。

**************************************

                    指揮官VTC (26. 8. 7)における支援集団司令官意見 

 支援集団です。先ずは空幕からの服務安全に係る各種の状況のデータの提示、そして、私どもに対します、この時期に事故防止上の注意喚起の機会を与えて頂きましたことに感謝申し上げます。 
 支援集団も、私、それから副司令官、1及び3輸空隊司令等、主要指揮官が今度の異動で交代したばかりであります。 
 この指揮転移に伴う我々指揮官の、自らの気の緩みや 配慮の不足から、各種事故を発生させないということに十分留意しているところです。
 先ず、飛行安全です。当集団においては平成24年の2月、2輸空隊のC一1、乱気流によるパッセンジャ11名の上空での負傷がありました以降、大きな事故は発生しておりません。 
 しかしながら、その後、断続的にヒューマンエラーによる事故が生じております。したがいまして、今後は人的過誤が事故に発展させない、あるいは結びつけない、と言ったところに力点をおいて、司令部から直接安全指導を強化させたいと考えております。 
 次に服務規律であります。当集団は、例年約30件程度の同種事案を発生させております。昨年度も28件ございました。幸いにして、今年度はこれまで、欠勤、私行上の非行といった形で2件、比較的良好な状態を維持しております。これは前司令官のこれまでの安全指導の賜物だと感謝をしておりますし、この状態を維持しつつ、または今後、絶無といった形にこれもまた重視をしていきたいと思っております。 
 とりわけ府中基地は、タ刻から納涼祭でありますので、飲酒に伴う事故等を発生させぬよう、私も含めてしっかり指導していきたいという風に思っております。
 最後に、自殺事故防止です。当集団は、向こう10年の間に約18件の自殺事案が発
生しております。昨年も3件ございました。これまで、これもまた、幸いにして発生はしておりませんが、いずれにしましても総隊司令官と同様、隊員相互の気づき力、これに力点を置いて指導して行きたいと思います。 
 私も一昨年、西空司令官として勤務していた折、2名の隊員、尊い命を失うことに直面をしました。あの時のことは今でも悔やまれてなりません。したがって、支援集団司令官としては、指揮統率上、最も大きな関心毎のーつとしてこの事故防止に取り組んでゆく所存です。以上です。 

着任後、府中基地での初めての訓示:平成26年8月21日(木)

**************************************

 府中基地で勤務する所属隊員に対して、私自身の職歴と府中基地の関係、就任時に示した統率方針の説明を行ったものです。
************************************** 

 府中基地に所属する隷下部隊の諸官、航空支援集団の任務遂行に昼夜を間わず精励努力していることに対して心から敬意を表したい。私が現職に就く以前においてこの基地で勤務したのは一度だけ。平成6年西空司令部の防衛班長の職にあった折り、米国フロリダで実施されたブルーフラッグと称する日米共同指揮所演習に参加のため、 
当時府中基地に所在していた総隊司令部に臨時勤務した経験がある。当時を振り返れば、当集団が改編されて間もない頃で、また国際平和協力活動に初めて参画するなど、支援集団にとって任務及び活動に大きな変貌を遂げようする先駆けの時代であった。 

 さて、私が航空保安管制及び航空気象に関して存在意義を最も強
く意識したのは、千歳基地司令の職にあった平成19年から21年。特に、平成20年7月北海道洞爺湖サミットを現地で統合任務部隊指揮官として全面的に支援した時のことであった。 
 今でも記憶に鮮明に残るのは、参加26カ国等の首脳が搭乗した各国政府専用機が‘ともすれば東京方面へ到着目的地を変更しなければならなり霧による天候不順の状況下で、千歳空港に次々に着陸。この全機着陸の成果を成し遂げた陰には、管制塔で保安管制業務にあたる管制隊、期間中シーフォグの進入を的確に掴むために苫小牧に進出してまで予報にあたった気象隊の存在があった。 
 こうした貴重な経験を通して、私が今般管制群及び気象群を指揮するに至ったことは誠に光栄なことであり、心から感謝する次第である。 
 ここで私が就任の辞の中で示した3つの統率方針の細部説明を行うこととする。3つの方針は①変化への適応②矜恃の保持③改善と自律の追求である。先の2つの項目は今日ある集団の良き気風と伝統を継承するという観点から、前司令官の所信からいただいたことは就任の辞で述べたとおり。 
 一つ目は、「変化への適応」。前司令官の言葉を借りれば、「ダーウインはその進化論の中で『生き残るのは強いものでなく、賢いものでなく、環境の変化に最も敏感に適応したもの』 と表現。組織や人もその例外ではない。過去の成功体験にこだわる事なく、時代の要求、情勢の変化等に敏感に反応し、先見性を持って変革することを恐れてはならない。 伝統とは変革、改革、改善の積み重ね。
 
二つ目は、「矜恃の保持」。航空自衛隊はその基本理念のひとつに「国家主権の保持 国民の安全確保」を掲げている。これは我々隊員があまねく任務遂行上の共通の価値観であり、誇りと使命感と共に胸に秘め、これらにふさわしいプロとしての言動、すなわち『矜恃』を持つべきとしているものである。 
 三つ目は、「改善と自律の追求」。改善は厳しい環境、特に予算と人員の制約を受けながらも増える業務量を的確にこなし、より質の高い任務遂行を目指すために不可欠な行為。また自律は、諸官ひとりひとりが隊員として、国民として健全な勤務や生活を行う上で必要な行為。ぜひ不注意であった、魔が差した、迂閣だったなどと軽率な行為に自らをさらすことのないよう、自らを強く律してもらいたい。
 
 結びに当たり、防衛省・空自創立60周年、支援集団創設25周年の大きな節目の年に、二航空観閲式をはじめとする各種行事・事業を成功に導いていこう。今後とも本田管制群司令及び高橋気象群司令を中核に、付与された任務を必ず完遂させるとともに、隊員ひとりひとり、より良き人生を全うせんがため、厳しい規律の中にも明るく、爽やかな気風を維持しつつ、「任務完遂 事故皆無」をモットーに、人・物をい 
とおしむ心を持つ大空のつわものにならんことを諸官に強く要望し、初度視察の訓示とする。 

着任後、入間基地での初めての訓示:平成26年8月29日(金)

**************************************

 入間基地で勤務する所属隊員に対して、私自身の職歴と入間基地の関係、就任時に示した統率方針の説明を行ったものです。(統率方針は他基地での訓示内容と同じです。
************************************** 

 入間基地に所属する隷下部隊の諸官、本日の視察及びこれまでの準備、ご苦労様。そして航空支援集団の任務遂行に昼夜を問わず精励努力していることに対して心から敬意を表したい。 
 私にとって、入間基地は昭和56年9月幹部候補生学校を卒業した直後の初任地である。第1高射群第4高射隊に配置になり、当時、高射部隊はナイキシステムを保有、そして我が国は北方においてソ連の脅威を肌で感じていた時代であった。 
 当時は航空支援集団は存在せず、輸送航空団隷下の第2輸送航空隊及び保安管制気象団隷下の飛行管理隊、入間管制隊、入間気象隊、飛行点検隊があった。それから10年の月日をも待つことなく、航空支援集団として改編され、そのわずか4年後には国際平和協力活動に初めて参画するなど、支援集団は任務・活動において情勢の変化と共に大きく変貌を遂げていくのである。 
                     
 さて、本日の初度視察を通じて諸官の部隊にそれぞれ期待することは個別に述べたところであるので、ここでは私の認識のほどを総括する。 
 まず第2輸送航空隊については、C一1の減勢管理を適正に実施しながら、昨今では国内空輸のみならず国外運航の任を担う勢いを有している。飛行管理隊にあっては、主に中空エリアの飛行管理並びにFADPの維持管理において、それぞれ安定した業務を推進している。入間管制隊は関係部隊と連携した上で多種多様な航空機のきめ細かい航空管制及びターミナル管制の各種業務を的確に実施している。入間気象隊は、いわゆる方面気象隊として中空関係部隊に適時気象状況を提供しつつ、新潟救難隊の任務支援についても抜け目なく実施している。飛行点検隊においては、保有機の可動率の最大確保を図りながら、陸・海・空が管理する航空保安無線施設等の飛行点検を実施。本年には初の国外任務も遂行している。 
 こうした実績ある入間所在の隷下部隊を、今般私が直接指揮するに至ったことは誠に光栄なことであり、心から感謝する次第である。 
 ここで私が就任の辞の中で示した3つの統率方針の細部説明を行うこととする。3つの方針は①変化への適応②矜恃の保持③改善と自律の追求である。先の2つの項目は今日ある集団の良き気風と伝統を継承するという観点から、前司令官の所信からいただいたことは就任の辞で述べたとおり。 
 一つ目は、「変化への適応」。前司令官の言葉を借りれば、「ダーウィンはその進化論の中で『生き残るのは強いものでなく、賢いものでなく、環境の変化に最も敏感に適応したもの』 と表現。組織や人もその例外ではない。過去の成功体験にこだわる事なく、時代の要求、情勢の変化等に敏感に反応し、先見性を持って変革することを恐れてはならない。私は思う、伝統とは変革、改革、改善の積み重ねであると。 
 二つ目は、「矜恃の保持」。航空自衛隊はその基本理念のひとつに「国家主権の保持  国民の安全確保」を掲げている。これは我々隊員があまねく任務遂行上の共通の価値観として、誇りと使命感を胸に秘め、これらにふさわしいプロとしての言動、すなわち『矜恃』を持つべきとしているものである。 
 三つ目は、「改善と自律の追求」。改善は厳しい環境、特に予算と人員の制約を受けながらも増える業務量を的確にこなし、より質の高い任務遂行を目指すために不可欠な行為。また自律は、諸官ひとりひとりが隊員とLて国民として健全な勤務や生活を行う上で必要な行為。ぜひ不注意であった、魔が差した、迂閣だったなどと軽率な行為に自らをさらすことのないよう、自らを強く律してもらいたい。 
 結びに当たり、防衛省・空自創立60周年、支援集団創設25周年の大きな節目の年に、まずは航空観閲式をはじめとする各種記念行事を、また集団が関係する航空防衛力整備の各種事業を成功に導こうではないか。最後に、赤峯第2輸送航空隊司令、家田飛行管理隊長、森崎管制隊長、大村気象隊長、川波飛行点検隊司令を中核に、それぞれの任務のみならず、集団全体に付与された任務を必ず完遂させるとともに、隊員ひとりひとり、より良き人生を全うせんがため、厳しい規律の中にも明るく、 爽やかな気風を維持しつつ、「任務完遂  事故皆無」をモットーに、人・物をいとおしむ心を持つ大空のつわものにならんことを諸官に切に要望し、初度視察の訓示とする。 
              

着任後、初めての小牧基地での訓示:平成26年9月10日(水)

**************************************

 小牧基地で勤務する所属隊員に対して、私自身の職歴と小牧基地の関係、就任時に示した統率方針の説明を行ったものです。(統率方針は他基地での訓示内容と同じです。
************************************** 

 小牧基地に所属する隷下部隊の諸官、航空支援集団の任務遂行に昼夜を問わず精励努力していることに対して心から敬意を表したい。 
 小牧基地とのかかわりで言えば、印象的であったのは、平成15年から20年の間、クウエート派遣の中にあって、現地アリ・アル・サレム基地におけるC-130の運用・整備を中心とした任務にひたむきに取り組む部隊隊員の姿を目の当たりにしたこと。 
当時、私は空幕運用課に勤務、派遣部隊の隊務運営状況を調査のため現地入りした際のことである。 
 最近では、昨年末、前職においてフイリピン国際緊急援助活動の終了に伴い、同派遣部隊の出迎え行事において空幕長の名代で謝辞を述べたことであろうか。 
   さて、本日の初度視察を通じて諸官の部隊にそれぞれ期待することは個別に述べたところであるので、ここではそれらの総括とする。 
 第1輸送航空隊については、冒頭すでに述べたとおりC-130及びKC767の運用整備に努めながら、昨年から今年にかけてフィリピン及びマレーシアの国際緊急援助活動、さらには南スーダンPK0への大いなる貢献を讃えたい。 
 小牧管制隊は、平成16年中部国際空港の開港及び名古屋空港の県営化に伴い新設された管制群の中でも最も新しい部隊であり、今年10周年の節目の年を迎える。 
 小牧気象隊については、基地所在部隊に対して気象情報を適時提供するとともに、5術校の関係課程学生に対し気象教育支援を実施するほか、国外任務運航要員への現地気象特性について教育を実施するなど、任務に邁進。
 航空機動衛生隊に関しては、その搬送実績において新編された平成18年から通算13件を数える。特に私の着任後、すでに2件の任務遂行からすれば、今後いっそう多忙になることは必定。 
   こうした実績ある小牧所在の隷下部隊を、今般私が直接指揮するに至ったことは誠に光栄なことであり、心から感謝する次第である。 
   ここで私が就任の辞の中で示した3つの統率方針の細部説明を行うこととする。3つの方針は①変化への適応②矜恃の保持③改善と自律の追求である。先の2つの項目は今日ある集団の良き気風と伝統を継承するという観点から、前司令官の所信からいただいていることは就任の辞で述べたとおり。 
 ―つ目は、「変化への適応」。前司令官の言葉を借りれば、「ダーウィンはその進化論の中で『生き残るのは強いものでなく、賢いものでなく、環境の変化に最も敏感に適応したもの』 と表現。組織や人もその例外ではない。過去の成功体験にこだわる事なく、時代の要求、情勢の変化等に敏感に反応し、先見性を持って変革することを 
恐れてはならない。私は思う、伝統は変革、改革、改善の積み重ねであると。 
 二つ目は、「矜恃の保持」。航空自衛隊はその基本理念のひとつに「国家主権の保持   国民の安全確保」を掲げている。これは我々隊員があまねく任務遂行上の共通の価値観として、誇りと使命感を胸に秘め、これらにふさわしいプロとしての言動、すなわち『矜恃』を持つべきとしているものである。 
 三つ目は、「改善と自律の追求」。改善は厳しい環境、特に予算と人員の制約を受けながらも増える業務量を的確にこなし、より質の高い任務遂行を目指すために不可欠な行為。また自律は、諸官ひとりひとりが隊員として、国民として健全な勤務や生活を行う上で必要な行為。ぜひ不注意であった、魔が差した、迂閣だったなどと軽率な行為に自らをさらすことのないよう、自らを強く律してもらいたい。 
 結びに当たり、防衛省・空自創立60周年、支援集団創設25周年の大きな節目の年に、まずは航空観閲式をはじめとする各種記念行事を、そして支援集団が関係する航空防衛力整備の各種事業を成功に導こうではないか。最後に、野中1輸空隊司令、藤川管制隊長、佐伯気象隊長及び辻本機動衛生隊長を中核に、付与された任務を必ず完遂させると 隊員ひとりひとり、より良き人生を全うせんがため、厳しい規律の中にも明るく、爽やかな気風を維持しつつ、「任務完遂   事故皆無」をモットーに、人・物・装備をいとおしむ心を持つ大空のつわものにならんことを諸官に強く要望し、初度視 
察の訓示とする。 
ページの先頭へ